結論
「2020年のある日から、すべての業務書類の押印が不要になった」とは整理できません。 行政手続では2020年の方針を受け、根拠となる規定などを順次見直しました。方針が出た日、個々の手続で廃止した日、集計資料を公表した日は別です。
電子印鑑作成印影の作成と押印の要否を分けて考える登録なしで使えます開く
この記事は2020〜2021年の公表資料を読み直すものです。 現在提出する書類の要否を、この年表だけで決めるものではありません。電子印鑑の画像を作れることと、その書類に押印が必要かという判断も別です。
方針の日付と、集計の時点を分ける
内閣府の説明は、2020年7月17日の閣議決定に基づいて各府省が順次見直すという内容です。 同日の一括廃止とは書かれていません。
| 日付 | 公表資料で区別する意味 |
|---|---|
| 2020年7月17日 | 見直しの基になる閣議決定 |
| 2020年11月13日 | 各府省の見直し方針の集計を公表 |
| 2021年3月31日 | 次の集計の回答期日・時点 |
| 2021年4月6日 | 3月31日時点の集計を公表 |
出典:内閣府「書面規制、押印、対面規制の見直し・電子署名の活用促進について」、行政手続における押印の見直し方針。https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/imprint/i_index.html(2026-10-01 到達)
資料名にある「見直し方針」は、すべてが実施済みという意味ではありません。 2020年の表は、一次資料の節に引用した区分を別に設けています。
この区分には「決定」が含まれます。さらに別の列には「廃止の方向」があります。決定・方向を含む数を、その日の廃止済みの数に読み替えることはできません。
公開集計表2件を、予定の区分を残して再計算した
2026-10-01、公開PDF2件の根拠別の行を読み取り、合計を再計算しました(n=2表、各7区分)。 法律・政令・告示や省令・根拠なしなど計14行を対象に、各列の合計と、行内の内訳を確認しています。別のPDF読取処理でも数値を照合しました。
| 集計 | 全数 | 原表の区分 | 再計算した数 |
|---|---|---|---|
| 2020年11月公表 | 14,992 | 廃止済・廃止決定 | 5,198 |
| 同上 | 同上 | 廃止の方向 | 9,711 |
| 同上 | 同上 | 存続の方向 | 83 |
| 2021年3月末時点 | 15,611 | 令和2年末までに廃止 | 13,435 |
| 同上 | 同上 | 令和2年度末までに廃止 | 1,753 |
| 同上 | 同上 | 令和3年度以降速やかに廃止 | 305 |
| 同上 | 同上 | 押印存続 | 118 |
全列の合計は原表と一致しました。2021年の表には、一次資料の節に引用した将来の区分が残っています。
2021年の「押印義務の廃止」15,493には、この305が含まれます。 令和2年度末までの2区分を足すと13,435+1,753=15,188で、全数の97.29%です。将来の区分を含めた15,493では99.24%となります。この約2ポイントの違いは、集計に含める区分の違いです。
なお、原表は回答期日までに政省令の改正等があれば対応があったとみなす集計です。個々の窓口で押印なしの書類が受理された回数や、実際の運用を測った数字ではありません。
2時点の差や、民間契約への広げ方に注意する
2つの表は全数が619違うため、同じ手続を追跡した進捗率として直接比べられません。 添付書類で押印を求めるものも含む集計です。83から118への存続数の変化だけを見て、35手続で押印が復活したとも言えません。
民間の契約については、同じ年の内閣府・法務省・経済産業省のQ&Aが、契約の成立と書面・押印の関係を整理しています。その説明には、一次資料の節に引用した留保があります。
このQ&Aの説明と、行政手続の押印見直しの集計は、対象を分けて読む必要があります。 2020年にすべての民間契約の条件が変わったことを示す表ではなく、契約の成立と後で証拠を示す問題も別です。
印影の画像を作れることを、提出条件と分けて測った
画像の生成結果は、押印の要否や効力を示しません。 2026年10月1日、やっとくんの電子印鑑の現行生成処理に、架空の文字「検証」を入力しました。認印・ゴシック体・赤・余白なし・傾きなし・かすれなしを共通条件として、寸法指定だけを変えたn=3画像をPNGで保存しています。
| 指定した寸法 | 保存したPNGの幅×高さ |
|---|---|
| 12mm | 142×142画素 |
| 18mm | 213×213画素 |
| 24mm | 283×283画素 |
WindowsのChromiumで処理を実行し、保存後に別の画像読取処理で寸法と透明部分を確認しました。3画像とも四隅は完全に透明で、印影の画素もありました。印影ファイルができたことまでの確認です。 印刷した実寸、提出先での受理、本人性の証明は測っていません。
一次資料
本文で参照した一次資料の引用と出典をまとめます。
「廃止済・廃止決定」
— 内閣府「押印を求める行政手続の見直し方針(根拠別集計)」、2020年11月13日公表、1ページ https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/imprint/document/201113document02.pdf(2026-10-01 到達)
「③令和3年度以降速やかに廃止」
— 内閣府「押印を求める行政手続の見直し方針(根拠別集計)」、2021年3月31日時点、1ページ https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/imprint/document/210406document01.pdf(2026-10-01 到達)
「特段の定めがある場合を除き」
— 内閣府・法務省・経済産業省「押印についてのQ&A」、2020年6月19日、問1、1ページ https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/imprint/document/200619document01.pdf(2026-10-01 到達)
測っていないこと・ここから先は推論
2026年現在の全手続、自治体ごとの提出要件、個別契約の有効性は測っていません。 公表資料の集計は歴史資料の区分と計数の再確認です。個々の廃止日や窓口での受理、会社内の承認規程、電子印鑑画像の法的効果も調べた結果には含めません。
次の1手
確認したい書類の名前・提出先・現在の案内をそろえると、過去の方針と今の要件を混同しにくくなります。押印見直しの年表は経緯を知る材料に、電子印鑑は画像を作る道具に、それぞれ役割を分けて使えます。