結論:「和解なら裁判、示談なら無効」ではない
和解は、裁判所だけで成立する合意を指す言葉ではありません。 民法は、当事者が互いに譲歩して争いをやめる契約として和解を定めています。一方、裁判上の和解には、裁判手続の記録に結び付く効力があります。私的な示談書と裁判上の和解の違いは、表題の選び方だけでは説明できません。
示談書私的な合意書の対象と支払条件を見る登録なしで使えます開く
ここでは民事上の争いについての合意と、その記録を扱います。示談金の税区分、刑事事件の処分、個別の賠償額は別の問題です。
判断表:合意した場と、残る記録を見分ける
「裁判外の合意か」「裁判上の記録か」を先に分けると、示談と和解の関係が読みやすくなります。
| 見る対象 | このページでの整理 | 同一視しないもの |
|---|---|---|
| 当事者どうしの示談 | 話合いで解決条件を合意する場面 | 裁判所が作成する調書 |
| 民法上の和解 | 互いの譲歩により争いをやめる契約 | 「裁判所でしかできない」という限定 |
| 裁判上の和解 | 裁判手続で成立し、法定の記録に結び付く和解 | 私的な書面の題名変更 |
| 民事調停 | 裁判所で話合いによる解決を図る手続 | 申立てをしただけで合意が成立した状態 |
示談としてまとめた内容が民法上の和解に当たることはあります。ただし、示談書という名称だけで契約の内容や効力が決まるわけではありません。 何について、誰が、どの条件で争いを終える合意なのかが別にあります。
民事調停は、合意に至るための手続です。民事調停法16条は、当事者間の合意が成立して調書に記載された場合に調停が成立し、その記載が裁判上の和解と同一の効力を持つと定めます。申立てと成立は別の段階です。
民事調停法16条。 https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/326AC1000000222(2026-10-01 到達)
訴訟を始めた後にも和解はあります。 そのため、「裁判になったら最後は必ず判決」「示談ができなかったら合意の機会はない」という読み分けも正確ではありません。次の統計では、この点を終局区分から確認します。
一次資料:用語の説明と、訴訟の終わり方を確かめる
示談の説明と、和解の法的な規定を分けて読むのが要点です。国土交通省は交通事故の賠償問題について、示談を次のように説明しています。
「当事者同士が話し合って」
国土交通省「損害賠償を受けるときは?」の「示談」。双方が納得できる条件でまとめる解決方法の説明。 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jibaiseki/accident/nopolicyholder/index.html(2026-10-01 到達)
民法695条は、和解の成立について次の文言を置いています。
「当事者が互いに譲歩をして」
民法695条。その間の争いをやめることを約する契約の規定で、裁判所での手続だけを定義した条文ではありません。 https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/129AC0000000089(2026-10-01 到達)
現行の民事訴訟法267条では、裁判所書記官が和解等について電子調書を作成し、ファイルに記録した場合の効力を次のように定めます。
「確定判決と同一の効力」
民事訴訟法267条1項。引用は法定の記録の効力であり、私的な示談書すべてに付く効果ではありません。 https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/408AC0000000109(2026-10-01 到達)
訴訟の終局区分も独立して集計しました。最高裁判所の2025年司法統計年報・民事行政編、第19表の総数行を目視転記し、8区分を合計しています。対象は2025年中に終わった全国の地方裁判所の第一審通常訴訟 n=143859 件です。
| 終局区分 | 件数 | 既済総数に占める割合 |
|---|---|---|
| 判決 | 74,903 | 52.07% |
| 和解 | 43,655 | 30.35% |
| 取下げ | 20,408 | 14.19% |
| 残る5区分の合計 | 4,893 | 3.40% |
残る5区分は決定743、命令1,211、放棄241、認諾430、その他2,268です。合計は公表総数143,859件と一致しました。割合は各件数を総数で割り、小数第2位に丸めたため、表示割合の和は100%と一致しません。
最高裁判所「令和7年 司法統計年報 1 民事・行政編」第19表、印刷36ページ/PDF50ページ。 https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/toukei/toukei-pdf-16675.pdf(2026-10-01 到達)
つまずき:合意の効力と、回収の結果を一つにしない
合意が有効かという問題と、約束が実行されたかは別です。 また、裁判上の記録の効力があっても、この記事の統計は支払いや回収の完了を示していません。
| 読み違い | 根拠から分けられること |
|---|---|
| 私的な示談には効力がない | 契約の効力と裁判上の記録の効力は別 |
| 表題を和解書にすれば確定判決と同じ | 267条は書記官による法定の記録についての規定 |
| 和解の30.35%が自分の解決確率 | 2025年に終わった事件全体の区分割合 |
2026年改正後の記録と、以前に提起された訴えにも区別があります。裁判所は、全面施行の2026年5月21日以後に提起する訴え等がオンライン提起・送達の対象と説明しています。267条の現行文言を、過去のすべての紙の調書が無効になったという意味には読めません。
裁判所「改正民訴法等で変わる民事訴訟手続の概要」第7節。 https://www.courts.go.jp/saiban/minjidejitaruka/minso_gaiyou/index.html(2026-10-01 到達)
当サイトの示談書見本は、物損についての私的な合意例です。裁判所の和解調書を作る機能や、記載内容の効力・回収を保証するものではありません。
テンプレートに架空入力を渡し、保存後の内容も確かめました。 2026年10月1日、やっとくんの「示談書」の現行生成処理で、合意対象の損害と支払条件を別欄に残すための架空データをn=2件作りました。各件で対応する2欄を変更し、Word(ワード・DOCX)へ保存して別の読込み処理で照合すると、計4欄すべてが指定した値と一致しました。元の配布物を上書きせず、生成と文字・セル値の保存だけを測った結果です。印刷、送信・提出、受理、法令上の適否は検証していません。
測っていないこと・ここから先は推論
個別の示談・和解の有効性、成功率、所要時間、回収額は測っていません。 統計の分母は2025年の既済事件であり、同じ年に提起された事件の追跡調査ではありません。簡易裁判所、家事事件、民事調停、裁判外の示談も今回の集計には含めていません。
裁判外での合意が取下げにつながった割合も不明です。表の「和解」欄だけから、社会全体の示談件数や当事者間の交渉成果は数えられません。実際の申立てや電子調書の作成・送達も行っていません。
次の1手
書類名より先に、合意の場と記録の作成者を見ると整理できます。示談書見本では物損の対象と支払条件を読み、裁判上の和解については裁判所の説明と法定の記録を分けて考える入口になります。