結論
残業代の端数処理は、日々の記録と月合計で扱いが違います。 日ごとの時間を15分単位で切り捨てる方法は、月合計の1時間未満の端数を処理する取扱いとは別です。架空の3条件では、同じ記録でも計算に使う時間が最大1時間違いました。
厚生労働省の説明は、時間外・休日・深夜の区分ごとの月合計を対象にしています。単に「30分未満だから消す」という読み方では、処理の単位が抜け落ちます。
残業代計算月の時間外労働時間から残業代を比べる登録なしで使えます開く
日々の記録から月の差を測る
n=3の架空の月について、各21日分を集計しました。最初の20日は各31分、最後の1日だけ9・10・11分で、残りの日の時間外労働は0分という設定です。全て法定時間外労働、時給1,200円、割増率25%、深夜・法定休日労働なしとしています。
| 条件 | 記録どおりの月合計 | 日ごとに15分未満切捨て | 月合計で30分基準の処理 |
|---|---|---|---|
| A:最後9分 | 10時間29分 | 10時間 | 10時間 |
| B:最後10分 | 10時間30分 | 10時間 | 11時間 |
| C:最後11分 | 10時間31分 | 10時間 | 11時間 |
日ごとの切捨ては、どの条件でも時間を減らしています。 31分を30分にする20日分に加え、最後の日を0分とするため、29・30・31分が失われます。月合計の処理ではAは29分減り、Bは30分、Cは29分増えます。
2026-10-01に、残業代ツールの計算へ各時間を代入し、別の分数計算で照合しました。1分当たりは1,200×1.25÷60=25円です。
| 条件 | 記録どおりの時間で計算 | 日ごと切捨て後 | 月合計の処理後 |
|---|---|---|---|
| A | 15,725円 | 15,000円 | 15,000円 |
| B | 15,750円 | 15,000円 | 16,500円 |
| C | 15,775円 | 15,000円 | 16,500円 |
表は基礎賃金100%を含む残業代です。 月合計の処理をツールが自動で選んだ結果ではなく、3方式で集計した時間をそれぞれ渡した比較です。入力は分÷60の時間数とし、小数第2位などで先に切り捨てていません。
一次資料が示す処理の単位
日ごとの切捨てと、月単位で認められる取扱いを分けて読むことが要点です。
「本来は1分単位が原則」
— 厚生労働省「確かめよう労働条件」割増賃金のQ&A、端数処理の注記 https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/chingin/q3.html(2026-10-01 到達)
同じ箇所では、月の合計に1時間未満の端数がある場合の取扱いが示されています。30分未満は切捨て、30分以上は1時間へ切上げで、常に切り捨てる方法とは異なります。
「日ごとに端数処理することはできません。」
— 山口労働局「労働時間の『切り捨て』はダメ!」端数処理のルール(令和4年10月) https://jsite.mhlw.go.jp/yamaguchi-roudoukyoku/content/contents/001988747.pdf(2026-10-01 到達)
この資料では、時間外・休日・深夜のそれぞれについて月合計を扱っています。記録上の実労働時間まで置き換える説明ではありません。
「50銭未満の端数を切り捨て,それ以上を1円に切り上げる」
— 厚生労働省「確かめよう労働条件」割増賃金のQ&A、端数処理の表 https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/chingin/q3.html(2026-10-01 到達)
これは1時間当たりの賃金額・割増賃金額や、月の時間外等の手当合計に生じる円未満の端数の説明です。分の丸めと円の丸めは別の処理であり、今回の金額は算術上すべて整数円になります。
同じ端数という言葉で混ぜやすい点
数値だけでなく、何を・いつ集計した数値かが違います。
| 混同しやすいもの | この比較での区別 |
|---|---|
| 毎日の15分未満と月合計の30分未満 | 集計する単位が異なる |
| 10時間30分と10.30時間 | 前者は10.5時間、後者は10時間18分 |
| 月合計の処理と毎日の記録 | 計算用の時間で元の記録を消さない |
| 残業代の総額と25%の加算分 | 表の金額は基礎賃金も含む |
測っていないこと・ここから先は推論
実際の勤怠記録、就業規則、給与明細、支払額は確認していません。 日ごとの切捨てを認める例として載せたものではなく、入力を変えると金額がどう変わるかの比較です。遅刻・早退の控除、法定内残業、月60時間超、固定残業代、変形労働時間制は今回の設定外です。
端数処理をどの会社でも採用できると判定した結果でもありません。時給単価の算定に含める手当や、会社が定めるより高い割増率も測っていません。
次の1手
比較の起点は、切り捨てる前の月の時間数です。 残業代ツールは、その時間数と賃金単価から概算を確かめるための道具として使えます。