結論:場所の名前と、そこで起きた移動を分ける
保育園のヒヤリハットは「園内だった」という場所だけでなく、誰がどこからどこへ移動した場面かを残すと、出来事の経過が伝わります。子どもの所在を把握できなくなった事例では、移動前後の状況や、気づいたきっかけが場所名を補います。
事故・ヒヤリハット報告書事象・原因・対応を分ける一般様式を見る登録なしで使えます開く
本稿は、こども家庭庁が掲載する2023年3月の事例集を読み直したものです。対象には保育所だけでなく、幼稚園・認定こども園も含まれます。公開事例を記録の読み方に使う記事で、園の実情に応じた安全管理や緊急対応の手順を定めるものではありません。
記録の読み方:発生したことと、背景の説明を分ける
「確認不足だった」という結論だけでは、出来事の順序が分かりません。公開事例を読む際は、次の情報を混ぜずに整理できます。これは読み取りのための整理で、全国共通の提出様式ではありません。
| 読み取る情報 | 記録から確認する内容 | 混ぜないもの |
|---|---|---|
| 場面と場所 | バス、園外、園内の室外・室内、実際の場所 | 園内という分類と、部屋・トイレ等の具体的な場所 |
| 移動と経過 | 移動の前後、誰がどこにいたか | 結果から推測した行動と、確認できた行動 |
| 発見と結果 | 何をきっかけに気づき、その時どうだったか | けがの有無と、危険な状態が起きたこと |
| 背景と見直し | 当時の職員間の認識、手順等の記述 | 原因の推測と、既に実施した対応 |
事例集No.65では、保育室からホールへ移動した後に、トイレにいた子どもが残されたことに気づく経過が書かれています。分類欄だけを読むのと、経過を読むのでは得られる情報が違うことを示す例です。本文中の改善案も、その事例の記述として読みます。
一次資料と実測:100個票の場面欄を数え直した
事例No.1〜100の「見落としの場面」欄を独立に抽出しました。2026年10月1日に取得した「教育・保育施設等におけるヒヤリ・ハット事例集」が対象で、n=100個票です。収集された事例の中での計数であり、全国の園を100施設調査した結果ではありません。
| 個票の場面欄の記載 | 今回数えた件数 |
|---|---|
| 送迎バス | 7 |
| 園外保育 | 25 |
| 園内(室外) | 29 |
| 園内(室内) | 38 |
| 場面欄が空欄 | 1 |
| 合計 | 100 |
場面の記載は99件、空欄は1件でした。空欄のNo.65はPDF51ページ(印字50ページ)を表示して確認しています。一方、巻頭の掲載件数表は園内(室内)を39件としています。今回の実測では個票の空欄を巻頭の数値から補完せず、別項目のまま残しました。
「見落としに関する事例が大半を占めている。」
— 「教育・保育施設等におけるヒヤリ・ハット事例集」、収集した事例の種類(PDF5ページ) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/a412ce1d-d1a4-419d-b341-1f64b52e7855/bc8ddb98/20230615_policies_child-safety_effort_report_02.pdf(2026-10-01 到達)
この資料は、団体への依頼と地方公共団体の公表事例から、特に見落としの事例を集めたものです。室内と室外の数字は、危険の大きさや発生率の順位を示しません。各場所で過ごした時間や、全国の発生件数を母数にしていないためです。
つまずき:事例の分類を、園の報告基準と同一にしない
公開事例を写すことと、園内で共有して改善することは別です。同じ年度の調査研究報告書は、収集の目的について次のように説明しています。
「保育職員に行き過ぎた責任を負わせるために行うものではなく」
— 「教育・保育施設における事故に至らなかった事例の収集・共有等に関する調査研究 報告書」、共通認識(PDF10ページ) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/a412ce1d-d1a4-419d-b341-1f64b52e7855/7d85e96f/20230615_policies_child-safety_effort_report_01.pdf(2026-10-01 到達)
同報告書は、安全対策を強化し、職員が安心して教育・保育に当たれる環境を作る目的を述べています。個人名や「不注意」という言葉だけで報告を終えず、出来事と背景を区別する読み方につながります。
「要因分析を行い、事故防止対策を講じる。」
— 「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」、施設・事業者向け、事故発生の防止(PDF10ページ) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/03f45df9-97e1-4016-b0c3-8496712699a3/39b6fd36/20230607_policies_child-safety_effort_guideline_02.pdf(2026-10-01 到達)
これは、集まった報告のうち重大事故が発生しやすい場面のリスクを分析する説明です。収集した件数を増減させることだけを安全対策の成果にはできません。事例集のリスク分類も試行として示されたもので、自治体への事故報告の要否や園内の分類を自動的に決めるものではありません。
自サイトの見本は店舗の水濡れを例にした一般様式です。保育専用の報告様式や緊急連絡票ではありません。記事の図も既存の書式を置き換えるものではなく、事象・背景・対応を分けて読むための説明図です。
テンプレートに架空入力を渡し、保存後の内容も確かめました。 2026年10月1日、やっとくんの「事故・ヒヤリハット報告書」の現行生成処理で、発生場所とけが・物損の記録を分けるための架空データをn=2件作りました。各件で対応する2欄を変更し、Word(ワード・DOCX)へ保存して別の読込み処理で照合すると、計4欄すべてが指定した値と一致しました。元の配布物を上書きせず、生成と文字・セル値の保存だけを測った結果です。印刷、送信・提出、受理、法令上の適否は検証していません。
測っていないこと・ここから先は推論
実際の保育、事故対応、職員の配置、改善後の事故減少は検証していません。n=100は2023年の公開事例集の個票数です。園種別・年齢別の発生率、2026年の全国件数、空欄になった編集上の理由は不明です。個別の園への安全助言や、危険を許容できる水準の判断も行っていません。
次の1手
記録を「場所」「移動の経過」「発見時の状態」「背景と対応」に分けて読むと、空欄と不明点が見えます。公的事例の件数を自園の発生率と比較するのではなく、園で共有する記録に何が不足しているかを考える材料になります。